■(佑太がアルバイトをしている)書店
(SE)自動ドアが開き、彼女が書店に入ってくる。
(SE)佑太、カウンター業務をしながら、
佑太(M)『あっ、あの子、また来た……!』
佑太(M)『はぁ……。かわいいなぁ。肌が白くて黒髪が綺麗……。
今ハマってる「ときめきカフェへようこそ!」のあいちゃんになんとなく雰囲気が似てて、
最近お店に来るたびに目で追っちゃう……。』
佑太(M)『(妄想しながらデレる)あいちゃんは、清純そうで結構ツンデレなところが
たまらなくかわいいんだよな~……。』
彼女「すみません。」
佑太「へ……? あ、あ!なんでしょうっ?」
彼女「統計学の入門書を探しているのですが……。」
佑太「統計学の入門書ですね! ご案内します!」
佑太(M)『はぁー、びっくりしたー。妄想してたら本人が話しかけて来るんだもん……。
僕、気持ち悪かったよな、きっと……。』
(SE)佑太、統計学の本がある専門書コーナーへ彼女を案内する。
(SE)本を探しながら、
佑太「統計学入門……。あ~今ちょうど入門書は品切れしているみたいで……。取り寄せされますか?」
彼女「締め切りが近いレポートで必要なので、他をあたってみます。ありがとうございました。」
(SE)お礼を言って、きびすを返す彼女。
佑太「あ、あの! 僕のでよければ、お貸ししますけど……。」
彼女「いいんですか?」
佑太「は、はい! 僕しばらく使わないので……。」
彼女「助かります! 大学もこの辺の図書館も回ったんですけど、貸し出し中ばかりで……」
佑太「今持っているので、ちょっと待っていてください。バックヤードから取ってきます。」
(SE)佑太、バックヤードで自分の鞄から本を取り出す。
佑太(M)『本当に偶然だけど、この本持ってて良かった~! これがゲームだったら完全にルートフラグ!
……まあ、現実はそううまくはいかないだろうけど……。』
(SE)佑太、バックヤードから戻ってきて、彼女に本を渡す。
佑太「これで大丈夫そうですか? 本当に入門書ですけど。」
(SE)彼女、本をしばらくめくって「大丈夫です」と答える。
佑太「よかった。じゃあ、お貸しします。返すのはいつでもいいですから。」
(SE)彼女、学生証を見せて、名前と携帯とメールアドレスを書いた紙を佑太に渡す。
彼女、「すぐにお返しします。本当にありがとうございます。」
佑太(M)『わざわざ学生証まで見せてくれた上に、携帯番号とメアドゲットできるなんて……!
夢か? これは夢なのか? 夢なら醒めないで欲しい……!』
佑太「(緊張して声が裏返り気味)ぼ、僕、御古川佑太っていいます! あの、あとで、
こちらからメールしてもよろしいでしょうかっ?」
彼女「もちろんです。本当に助かりました。お仕事中にすみません。」
(SE)彼女、書店を出て行く。
■書店
佑太、書店のシャッターを閉めている。
彼女「すみません。」
佑太「あっ、こんばんは。」
彼女「先日はありがとうございました。」と、佑太に本を返す。
佑太「お役に立てて良かったです。」
彼女「お礼に、これ……。」と、映画のチケットを差し出す。
佑太「あ、この映画観たかったんです! ありがとうございますっ。」
彼女「よかったら、ご一緒しませんか?」
佑太「ご一緒って……! 一緒に映画見に行ってもらえるんですかっ? 僕とっ?」
彼女「ご迷惑でなければ……。」
佑太「迷惑なんてとんでもないっ! (遠慮がちに)む、むしろ、僕なんかと一緒に歩くの
嫌じゃないですか……? 気を使ってるなら全然……。」
(SE)彼女、かぶりを振る。
佑太(M)『問題ない、のかな……。』
佑太「じゃ、じゃあ、ぜひ……!」
(SE)彼女、安堵して笑顔に。
佑太(M)『すごく嬉しそうにしてくれてる……! あ~、そんな顔されちゃうと
本当に好きになっちゃうから、困る……!』
■駅前
(SE)佑太、先に待ち合わせ場所に来ている。
佑太(M)『リア充の友達に相談して、見た目はなんとかしてもらったつもりなんだけど……。ヘンじゃないかなぁ、自分じゃよく分からないよ……。大体、彼女が僕みたいなのと出かけてくれるなんて、やっぱり話がうますぎるっていうか、美人局的な……? いや、彼女はそんな子じゃないっ! いや、でも……っ。』
佑太「はぁ、やっぱり僕、3次元ムリかも……。」
(SE)彼女が待ち合わせ場所にやって来る。
佑太「全然待ってませんっ! え、いつもと感じが違う? ……僕、洋服とか無頓着だから、
友達に協力してもらって……。ヘンですかっ?」
彼女「ヘンじゃないですけど、普段もヘンじゃないですよ。かわいい。」
佑太「普段もヘンじゃない? かわいい? 僕がっ?」
佑太(M)『この子、趣味が斜め上な感じなのかな……? とりあえず、ヘンじゃないみたいでよかった。』
■公園
佑太「映画、すっごく面白かったです! ありがとうございました。」
佑太「(言いよどんで)あの……。」
佑太「(聞きづらそうに)どうして、今日映画に誘ってくれたんですか? 本貸しただけなのに……。」
彼女「ご迷惑でしたか?」
佑太「迷惑なんて! 全然! すっごく嬉しかったです!」
彼女「いつも本屋であなたの事を見ていて、ずっとお話したいなと思っていて……。」
佑太「話がしてみたかった? 僕とっ!?」
彼女「はい……。接客も親切で、特に小さい子どもやお年寄りに優しいところとか、
本を丁寧に扱っているところとか、良いなって……。」
佑太(M)『接客が親切……本の扱いが丁寧……そんなの当たり前なのに……。』
佑太「(感極まって)僕のこと、そんな風に見てくれてる人がいたなんて~!
僕、君の事が大好きです~! 付き合ってください!」
(SE)彼女の返事はOKで。
佑太「えっ、付き合ってもらえるんですかっ!? (泣いている感じのAD下さい)ボクもう
死んでもいいです~……。」