■生徒会室・放課後
(SE)市川が手早くPCに入力している。
市川「これで、終了。……ふうっ、待たせたな。」
(SE)彼女、待ちつかれて寝ている。
市川(M)「寝てる……。結構待たせてしまったからな……。」
市川「しかし、この書類のダブルチェックを今日中に終わらせないと帰れないし、かわいそうだが、起こすとするか。」
(SE)立ちあがり彼女の席に近づく。彼女の寝顔を見ながら。
市川(M)「そういえば、こいつの寝顔を見るのは初めてだ……。まったく、いくら付き合っているとは言え、無防備すぎるんじゃないか?」
(SE)彼女、寝言で市川の名前を呼ぶ。
市川「(焦って)うわっ! 起こそうとしていただけだ! 寝顔を見ていたわけじゃないぞ!」
市川(M)「ね、寝言か……。ビックリしたぁ……! 寝言でオレの名前を呼ぶなんて、かっ、かわいすぎるだろうがっ!」
市川「それにしても、よく寝てる……。」
市川(M)「意外とまつ毛が長いな……。頬がやわらかそうだ……。つつきたいっ。
いや、まずいだろう、ここは生徒会室だぞ! いや、しかし……。」
(SE)市川、彼女の頬を軽くつつく。
市川(M)「やわらか(い)……!」
(SE)市川、彼女の頬をつつく。
市川(M)「自分の頬とは全然違う! 柔らかすぎるだろ? コレ!?
ふにふにしていて、触っていると、なんだかすごく癒される! ずっと触っていたい!
持ち歩いてふにふにできたら、すごく素敵なんじゃないだろうか!?
紛争地帯で配ったら世界平和が訪れるくらいのシロモノだ!」
(SE)市川、我に返って
市川(M)「って、何考えているんだオレは! 世界平和は置いておくとして、ひとまずコイツを起こして書類をダブルチェックさせないと……!」
(SE)市川、彼女を起こそうと肩を揺する。
市川「おい! 起きろ! 書類の入力が終わったから、ダブルチェックを頼む!」
(SE)彼女、起きるが、ちょっと寝ぼけている。
市川「時間がかかってしまって悪かったが、寝ぼけているなら顔でも洗ってシャキっとしてこい! ダブルチェックの意味がない。」
(SE)彼女、顔を洗いに行こうとして、寝ぼけてよろける。
市川「(彼女を支えて)おっと。大丈夫か?」
(SE)彼女「大丈夫です。」と言いながらも、ちょっとうつろ。
市川「急に立ち上がるからだ。気をつけ(ろ)」
市川(M)「なんだーっ! その無防備な顔はーっ! 抱きしめたくなるだろう!
キスしたくなるだろう!! しかしオレは生徒会長だからそんなことはしない!
風紀の乱れた男子生徒じゃあるまいし! ガマン! ガマンだ、オレ!!」
(SE)彼女、市川が怒っているのかと勘違いして書類のチェックをし出す。
市川「どうした。顔は洗わないのか?」
(SE)彼女「大丈夫です。すみません。」とチェックを続ける。
市川「そうか。じゃあ、チェックを頼む。それを今日中に提出しないと、部の予算が下せないからな。」
(SE)彼女「はい」と、チェックを続ける。
市川(M)「なんだかよく分からんがごまかせた……。とりあえず、チェックが終わるのを待つか……。」
(SE)彼女、チェックが終わったと市川に告げる。
市川「終わったか? じゃあ、提出して帰るか。」
(SE)2人、生徒会室の鍵を閉めて退出する。
■校門
市川「予定より遅くなったな。暗くなってきたし、家まで送ろう。」
(SE)彼女「いいんですか?」
市川「いいに決まっているだろう。オレは生徒会長だが、お前の彼氏、でもあるんだから。
ほら、手を貸せ。」
(SE)彼女「手ですか?」
市川「ったく鈍いな! 手を繋いで帰ろうと言ってるんだ! オレとお前の仲は学校中に知れ渡っているし、校外なら手を繋ぐくらいは許されるだろう。」
(SE)2人、手を繋いで歩き出す。
市川「今日は予定した以上に入力に時間がかかってしまって、待たせて悪かった。お詫びと言うわけではないが、ケーキでもおごってやるから家に連絡しろ。」
(SE)彼女「はい!」と嬉しそうに返事をする。
市川(M)「ったく、本当にうれしそうだな……。」
市川「この間行った店のチーズケーキ、お前ずいぶん気に入っていただろう。そこにしよう。
ほら、さっさと行くぞ。」