■ショッピングモール
篠村「やっぱり休日のショッピングモールは騒がしいですね……。付き合せてしまってすみません。」
(SE)彼女「いいえ、でも珍しいですね、ショッピングモール。」
篠村「実は今度、うちの書店で、『絵本フェア』をやることになったんですが……。
店員1人が一冊ずつ、読み聞かせをしなくてはならなくなってしまって……。」
(SE)彼女「大変ですね。」
篠村「それで、どんな絵本が今人気なのか調べていたら、家族向けのショッピングモール内の大型書店には、絵本のコーナーがあって、特にここの店舗は充実していると書いてあったもので、見てみたくなって。」
■モール内の大型書店
(SE)書店を発見する。入り口付近に絵本コーナーがあり、子どもたちが絵本を読んでいる。
篠村「あ、ここですね……。あっ! 絵本を自由に読めるコーナーがあるんですね……。
あっちは人気の絵本をランキング形式で陳列してある……。すごいなぁ。」
(SE)興味津々に絵本コーナーを見て回る篠村。
(SE)彼女「読み聞かせの絵本は決まっているんですか?」
篠村「それなんですが……。正直、どの本が読み聞かせに向いているのか、まったく分からない状態で……。」
(SE)彼女、一冊の絵本を持ってくる。「これ、私が姪っ子にあげた絵本なんです。」
篠村「『ぴーぴーまーちゃん』……。(絵本をめくりながら)アイスを食べ過ぎて
お腹をこわしちゃうんですね……。どうしてこの本を姪っ子さんに?」
(SE)彼女「姪っ子はアイスが大好きで、よく姉を困らせているのを見ていたので。」
篠村「子どもはアイス好きですもんね……。(絵本をめくりながら)この本、絵もかわいいし、
言葉も簡潔で読み聞かせにぴったりかも……!」
(SE)彼女「ご協力できてよかったです。」
篠村「助かりました。本当に困っていたので……。後は頑張って読み聞かせの練習をしないと……。」
■青葉書房
(SE)篠村が子どもたちの前で読み聞かせをしている。
篠村『(まーちゃん)いたーい! いたーい! おなかがいたいよぅ。
(本文)まーちゃんは泣くばかりで、ママはこまってしまいました。』
篠村『(ママ)まーちゃん、どうしておなかがいたいのかしら? おいしゃさまに行かないとだめかしら?』
【間】
篠村『(ママ)アイスをいちどに2つもたべたら、おなかはびっくりしてぴーぴーになってしまうの。
いたかったでしょう?』
篠村『(まーちゃん)うん。とってもいたかった。もう、アイスは1こしか食べない。』
篠村『(ママ)そうね。アイスは1こだけね。』
篠村『(本文)ママは、まーちゃんのおなかをあたためてねかせました。
しばらくすると、まーちゃんはいつもどおりげんきになって、おともだちとあそびに行きました。』
(SE)読み聞かせが終わり、少しざわついている。彼女が、篠村に話しかける。
(SE)彼女「読み聞かせ、すごく上手でした! びっくりしました。」
篠村「(やや疲れた感じで)いやぁ、大変でした。ボランティアで読み聞かせをしている方に
コツを教えてもらって、なんとか……。」
(SE)彼女「これでいつパパになっても、読み聞かせバッチリですね。」と何気なく。
(SE)彼女の一言にドキッとしてしまう篠村。
篠村「えっ……。」
篠村(M)『いつパパになっても、って……。』
(SE)彼女、動揺している篠村を見てハッとして
「あの、そういうつもりでは……」と、俯いて顔が真っ赤に。
篠村(M)『うわ、耳まで真っ赤になって……。』
(SE)篠村、彼女の手を握り、
篠村「(やや緊張ぎみに)僕は、いつパパになってもいいです。……あなたが、奥さんになってくれるなら。」
(SE)彼女、一瞬驚いて「はい」と返事。篠村、レジから他の店員に呼びかけられる。
篠村「あ、はーい! 今行きます!」
篠村「……仕事が終わったら連絡します。大切な事なので、後でゆっくり話をしましょう。」
(SE)去り際に、
篠村「(耳元で)愛しています。」
(SE)レジに向かう篠村。